朝日新聞社は2018年、「ミレニアル世代の女性」をテーマにしたメディアや「ペット」をテーマにしたメディアなど、趣味やテーマを深掘りする “バーティカルメディア “という構想のもと、7つのWebサイトを立ち上げました。

そのうちの1つが今回ご紹介する、株式会社ラナデザインアソシエイツ (以後、ラナデザイン)が制作を担当した「書籍」がテーマのメディアサイト『好書好日』です。

縦書きのロゴや「恋する」「笑う泣く」といったカテゴリー分けが印象的な当サイトは、どのような企画、制作プロセスを経て誕生したのか、当時の提案資料を交え、その裏側に迫ります。

CLlENT:朝日新聞社
RELEASE:2018.06.13
URL: https://book.asahi.com/
TYPE:サイト制作
FIELD:ロゴ&サイトデザイン, コーディング
CREATED BY:株式会社ラナデザインアソシエイツ

目的:由緒ある朝日新聞社の書評の世界観を壊さず、『好書好日』としてリブランディングするために

『好書好日』は、もともとあった書籍情報サイト『ブック・アサヒ・コム』に、新しい価値観を加えたリブランディングという形で制作がスタートしました。

朝日新聞社の書評はもともと由緒ある存在で、横尾忠則さん、柄谷行人さん、サンキュータツオさんなどといった錚々たる方々が書評を書かれており、『ブック・アサヒ・コム』はそれらの書評を中心とした新聞に掲載された本に関する記事をWebに掲載するために運営されていました。

その世界観を残しつつも、本離れが進む現代において、あらためて「人生を豊かにするための本との出会いを提供するサイトに変わりたい」、そしてこれまでのサイトが新聞由来の記事を掲載していたこともあり、かなりの読書家を対象にしたサイトとしてターゲットの固定化や高齢化が進んでいたため、ユーザー層を広げていきたい、という2つの課題がありました。

そこで様々な切り口で「本との新しい出会い」を演出し、かつ新しい読者層を獲得するメディアサイトへとリブランディングをすることが、ラナデザインのミッションでした。

プランニング:ロゴを最初に制作することでサイトのトンマナを決めていった

クライアントが用意したイメージ写真のスクラップ

Webサイトをつくるためには、サイトのトンマナを決めることが重要です。ヒアリングした結果、クライアントの中には「雑多なものが並ぶアジアのマーケットやヨーロッパの蚤の市。迷い込んで入った路地裏に、隠れ家的な素敵なお店を見つける嬉しさ」といった世界観のイメージがあり、その世界観に近いイメージ写真のスクラップをクライアント側で用意していただきました。

これはラナデザインがブランディングを行う際にも使う方法のひとつであり、今回もそのスクラップを用いて、クライアントと世界観の認識合わせを行っていきました。

実際に提案に用いたロゴ案。手書きも含む42案から、提案用の13案に絞り込んだ

そして、「ロゴを議論する中で世界観を凝縮させることがブランディングの第一歩」という考えのもと、『好書好日』制作プロジェクトにおいても、「まずはロゴから世界観をつくっていきましょう」と提案し、ロゴ案の制作に着手します。しかし、いただいたお題には沿っていても、デザイナーの解釈によって様々なロゴが生まれます。そこでラナデザイン社内のデザイナー複数人で42のロゴデザイン案を出し、クライアントとも話し合いながら、3~4案のロゴに絞り込んでいきました。

このタイミングで、ロゴ別のサイトデザイン案も提案。絞り込まれたロゴ案それぞれの持つトンマナを活かした3案を提案しました。

最終的に提案したロゴ別のサイトデザイン案

そして「書物の起源は中国にある」というひとつの考えのもと、アジアの雑多感を持たせつつ、「モダンなアジアらしさ」を表現したものから、「本」と「BOOK」のダブルミーニングで知的感を出したものなどの3案から、最終的なトンマナを決めていきました。

制作プロセス:「本との新しい出会い方」をいかにデザインに落とし込むかが鍵だった

ポイント01:アナログ感を残しつつ、情報の整理は基本に忠実なメディアサイトとしてデザインする

本との出会い方を変えるため、これまでの“小説”“実用書”といった本のジャンルによる記事分類ではなく、その本を読んだら何をしたいか、どんな気持ちになるか、といった視点での分類に変えたい、というオーダーがありました。

たとえば、おいしいものが出てくる本についての記事は「味わう」、誰かにプレゼントするのにふさわしい本の記事は「贈る」といった分類です。

ただ、サイトのトンマナとして表現したいノスタルジー感、雑多感を残しながら、様々なカテゴリー分けをどう見やすく表現するかは課題の1つでした。

エモタグ一覧

そこでラナデザインでは、「気持ちを表すエモ―ショナルタグ(以後、エモタグ)を大きく見せるのがよいのでは」と提案。エモタグをアイコンとして開発し、その他の情報整理は基本に忠実なメディアサイトとしてのデザインをしていくことで、アナログ感とデジタルの融合を実現させました。

ポイント02:実際の運用時のことを想定した、ディテールへのこだわり

『好書好日』では、古典文学を切り口にしたコンテンツもあれば、話題の映画を切り口にしたコンテンツもあり、そこに横尾忠則さんの書評が並んでいたりと、様々な切り口のコンテンツが並びます。

「本を開くと新しい世界が広がる」ことをイメージしたデザインへ

それは「本の出会い方を変える」ためではありますが、デザインに落とし込むのは容易なことではありませんでした。なぜなら、アイキャッチ画像に文豪の写真が入る場合もあれば、その横にはポップなイラストが入る場合もあり、どんな素材が入ってきても違和感のない、同じ世界を共存できるデザインにしなければならないからです。また、ワイヤーフレームでは気にならなかったけれども、いざデザインしてみると違和感がある、という点も多く生まれてきます。

たとえば「関連する書籍」として紹介する書籍が横3列のデザインに対して、実際の運用では2列分しか表示させないこともあるでしょう。そういった場合は、サイトに用いている猫のイラストを表示させるなど、実際の運用でどう使っていきたいかを随時クライアントにヒアリングを行い、細かいディテールにまで気を配ったデザインをしていきました。

結果:「なにを入れてもしっくりくる魔法の額縁」読者層にも変化が生まれ、クライアントがやりたいことを実現できた

最初にロゴを決めてトンマナが明確になったことで、実際の制作自体もクライアントと同じ視点に立ち、二人三脚感で進めていくことができたという本プロジェクト。

2018年6月13日にローンチし、実際に運用が開始されましたが、『好書好日』編集長からは「様々な切り口のコンテンツを配信しているが、なにを入れてもしっくりくる。魔法の額縁だ!」とお褒めのお言葉をいただけたそうです。

また、当初の課題であった読者層の固定化、高齢化も、運用半年で大きな変化が生まれました。もともと50代以上の読者が大半でしたが、『好書好日』として運用している現在では30代を中心に、25〜44歳のユーザーが6割以上を占めるようになっています。ユーザー数も運用開始6カ月で、これまでの倍に成長しています。

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左:デザイナー麻生英里氏、右:プランナー松田育子氏

本プロジェクトを担当したプランナーの松田育子さん、デザイナーの麻生英里さんは、ローンチした6月13日をこう振り返ります。

松田:実際にローンチして記事が入っているのを見ると、とても素敵だなと感じました。また、様々なコンテンツが並び、お客さまがやりたいと思っていたことをしっかりと実現できているのが、本当に嬉しかったです。

記事を書いてくださっている編集部のみなさま、公開に間に合わせてくださったシステム担当のみなさまにも本当に感謝しています。

麻生:ローンチしたときは、我が子が巣立った気分でした。また、いまも巣立った先で多くの方々に可愛がられているのが、とても嬉しく感じています。ユーザーの方々に、記事を読みながら好書好日の世界観も楽しんでもらえると嬉しいです。

また、個人的にはとても悩んでつくったデザインだったのですが、他のメンバーからは “花開いたね”と言われた案件だったなと。「活字に対する敷居を下げたいけど、知的な部分も失いたくない」「雑多すぎても分かりづらいけど、シンプルにしてしまうと求めている世界観が失われてしまう」といった相反することに悩みながらデザインに落とし込んでいくなど、自分にとって本当にチャレンジングなことが多い案件でした。

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クライアントと二人三脚でプロジェクトを進めていく裏側には、ロゴを起点に世界観をデザインに落とし込む、ラナデザインならではのアプローチがありました。

そしてラナデザインでは、ローンチ以降もデザイン改修も担当。より『好書好日』は独自の世界観を持ちながら、素敵なサイトへと成長していきます。ranadesign1_9ranadesign1_10ranadesign1_11