Panasonic充電式乾電池eneloopの10周年を記念した新しいプロジェクト「Life is electric.」。電気の可能性やおもしろさを伝えるため、生活の中の色んな方法で「電気」を起こし充電した21本のeneloopの物語を伝える本プロジェクトは、カンヌライオンズ、さらにロンドン・インターナショナル・アワーズを受賞します。

そして、そのプロジェクトの一部プロデュースおよびWeb制作を担当したのは、様々な企業の広告・プロモーション案件やWeb制作、イベント企画などを手がける株式会社マスクマンです。今回は、「当初は実現できるかも危うかった」という本プロジェクトの裏側に迫ります。

CLlENT:パナソニック株式会社
AGENCY:株式会社 電通
RELEASE:2016
TYPE:啓蒙キャンペーン
FIELD:企画提案, 制作ディレクション, Webサイト制作
CREATED BY:MASKMAN Inc.

企画背景:日常の中の様々なエネルギーから電気を生み出し、電気の大切さを伝える

「ふだんは気にもしないけど、世界中のあらゆる街で私たちは電気と共に暮らしている。もしも目に見えない電気の姿を見ることができたら……」

Panasonic充電式乾電池eneloopの10周年を記念した本プロジェクト。ふだん何気なく使っているけれども、実は電気を生み出すのは大変だ、という電気の大切さを伝えることを目的とした、啓蒙的なキャンペーンでした。

様々な手法を使い、日常の中で生まれるエネルギーをeneloopに充電をするという企画。しかし、いざ着手をしてみると当初は約30個近いアイデアがあったにも関わらず、現実的な予算感だと5つしか制作できない見積もりに。

そこでマスクマンはWebサイト制作だけでなく、発電装置を制作するためのパートナー探しから担当することに。

プロデュース:チームメイクが仕事。鍵は電気工作ができて造形も得意とするメンバーをアサインできるかどうか

マスクマンが本プロジェクトに関わるキッカケとなったのは、JR東日本『行くぜ、東北。』のCMなどを手がけてきた電通・八木義博氏からの「30個くらい、充電のためのアイデアの雛形があるのだけども、実際にこれらを制作できるところを知らないか」という相談でした。

相談を受けたマスクマン代表兼クリエイティブディレクターを務めるナカニシケイゴ氏にとって、憧れの八木氏からのオーダー。なんとしてでも実現させたい、という想いから、チームメイクを担当します。

しかし限られた予算の中、複雑な配線でありながらも、ビジュアル的にも優れた造形を実現することは容易ではありません。
電気工作ができて、かつ造形も得意とするチームはないか――そこで声をかけたのが、過去にマスクマンで制作したKIRIN「一番搾リング」のプロジェクトにおいて、什器制作を担当した株式会社アルチザンのメンバーでした。

まるで下町ロケットに出てきそうなおじいさんたち。彼らがいなかったら実現しなかった

― マスクマン代表 ナカニシケイゴ氏

アルチザンからチームとして担当することになったのは、3名の60代前後の職人の方々。まさに町工場の、下町ロケットに出てきそうな “おじいさん” たちがいなければこの企画は実現しなかったとナカニシケイゴ氏は語ります。

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マスクマン代表取締役 ナカニシケイゴ氏

ナカニシケイゴ:はじめの打ち合わせでアルチザンチームの方がいらっしゃったとき、電通の八木さんが「ハムスターがくるくる回って発電させる様子、かわいいじゃないですか」などと企画を説明するんですよね。

そしたら、その職人のおじいさんたちはイメージとして出していたラフ案を見て、「それよりもさ、この図面よ、これじゃ電気つながらないよ」「あっ、これ図面じゃないのね。道理でおかしいと思ったよ」と、コンセプト説明のタイミングでもう作ることを考えていて。

話は噛み合わなくてすごい面白かったんですけど、あーでこーでとすぐに制作イメージを持って取り組んでくださり、限られた予算にも関わらず、これはいけそうだと実感しました。

* * *

スワンボートをくるくる漕いで発電させる、滝の水力で発電させるなど、想像すれば仕掛けは簡単なのでは?と思いがちですが、実際の配線設計はそう容易ではありません。

アルチザンチームのアサインにより、当初は「5つしか予算的には厳しい」という状況であったにも関わらず、最終的には21個のアイデアを実現することができました。そして、マスクマンはそれらの発電を紹介するWebサイトの制作に進みます。

 

制作プロセス:広告案件では経験できなかった、アート性を追求するプロジェクト

ポイント01:撮影とWebサイト制作のパラレルディレクション

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Web制作の現場の気持ちとしては、あがってくる写真素材、動画素材をベースにWebサイトをデザインできるのが理想ではあります。しかし限られた期間の中、すべての案件が理想的な制作フローを実現できるとは限りません。

本プロジェクトにおいても、すべての素材が揃う前からWebサイト制作がスタート。「きっと、ここにはこういう動画素材があがってくるはず。だから、こういうデザインにしよう」と、ある程度納品素材のイメージを想像しながらのサイト制作でした。

そのため、ディレクションを担当したナカニシケイゴ氏は、可能な限り撮影の現場にも同行し、イメージのすり合わせを行います。撮影とWebサイト制作のパラレルディレクションが、本プロジェクトのポイントの1つでした。

ポイント02:グラフィックとデジタルのすり合わせ

本プロジェクトのWebサイトにおいて、最もこだわられて作成されたのはサイトTOPページです。全体のディレクターを務めた電通・八木氏が実現したかったのは、ユーザーが無意識に見ていくと映像と音楽によってストーリーが展開されていくTOPページ。

そのため、ナカニシケイゴ氏ははじめ、JavaScriptで動きを実装するのではなく、映像だけで表現した方が良いのでは、と考えます。一方で八木氏は「オンマウスでアクションが起こる」というWebサイトならではのインタラクティブな表現を実現するために、「JS実装をさせたい」と強いこだわりを持ちます。

しかし、JS実装ではタイムラグが生まれてしまい、映像と音楽が一体となって動くように制御することは難しく、通常であればJS実装せずに映像のみで解決する、というのが定石でした。

そこでグラフィックとデジタルのすり合わせを幾重にも重ね、Webサイトとしてのクラフトと映像表現としてのクラフトの両立にこだわったWebサイトが完成します。

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TOPページイメージ(現在はサイト非公開)

ナカニシケイゴ:もちろん普段から妥協をしているわけではありませんが、限られた期限の中で実装するためには、あえてこの機能を切り落とす、ということはあります。しかし今回の案件を通じて、八木さんの妥協することなく、クラフトを追求して作り込んでいく姿勢を見れたことは非常に大きな学びでした。

一般的な広告案件とは違う、突き詰めるアートとしての制作に関われたことは、マスクマンとしても非常に良い経験でしたし、今回カンヌライオンズはプロジェクトとしての受賞だけでなく、Webサイトも評価してもらえて受賞をしています。

それもひとえに、そういったクラフトの追求があったからこそだと感じています。

結果:「生み出した作品が一番の営業マン」仕事が仕事を呼んでくる

リリースにいたるまでの道のりは、決して容易なものではありませんでした。特に、難しいJS実装によって何度もバグが出てしまい、一度は「これ以上やっても公開はできないから、この企画はボツにしよう」とクライアントから言われてしまう事態にまで陥ります。

当時、マスクマンは創業3年目と決して実績が多いとは言えない時期。憧れの八木氏からのオーダーであり、マスクマンとしてもアワードを狙いたい――そんな想いから、すでにボツと言われて「使われるかどうかわからない」という状況の中、Webサイトを納品します。

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公開されるかどうかわからない不安を抱え、「公開されそうでしょうか?」と頻繁に電通の担当者に電話をしていたというナカニシケイゴ氏。リリースされたときは、「やっと公開された……」と安堵の気持ちでいっぱいでした。

その後、本プロジェクトはカンヌライオンズ2016にてDESIGN GRAND PRIX & SILVER LIONを受賞。さらにロンドン・インターナショナル・アワーズをも受賞し、マスクマンとして大きな実績となります。

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ナカニシケイゴ:はじめてトロフィーが届いたとき、「見たことがあるトロフィーが来たな」と思いました(笑)。最後は公開されるかどうかわからない状況にまで陥ってしまいましたが、八木さんからはその後もお仕事の相談をいただけるようになりまして。

僕は相性のいいクライアント、相性のいいチームとベストアサインを組むことで良いアウトプットが生まれると考えているのですが、僕たち自身もベストアサインされる側として選ばれる存在でいなければいけない。

1回目はお試しで依頼されるという可能性がありますけど、八木さんからは2回目も声をかけてもらえたので、「評価してもらえたのかな」と嬉しかったですね。

そして、生み出した作品が一番の営業マン。今回アワードを受賞したことをキッカケに、他からも新しくご相談をいただけるようになりました。仕事が仕事を呼んでくるからこそ、これからも妥協することなく、ベストアサインで案件に取り組んでいければと考えています。

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外部パートナーをも巻き込んだチームメイクによって、Web制作だけでなくアプリ開発、イベントへの装置提供など、さまざまな企画を担当しているマスクマン。マスクマンのベストアサインによって、これからも私たちの記憶に残るクリエイティブが世の中に生まれ続けます。

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MASKMAN MEMBER

DIRECTOR:ナカニシケイゴ
DEVELOPMENT:大塚賢太郎