「ベストアサインできない案件は、お断りします」

そう語るのは、デジタルサイネージ、アプリ開発、Web制作などを行う株式会社マスクマンの代表取締役であり、クリエイティブディレクターを務めるナカニシケイゴ氏。

同社では、「リソースが空いているから」という理由でメンバーをアサインすることはなく、常に最高のチームで案件を担当する ”ベストアサイン” にこだわっている。そのため、もしベストアサインができなければ、仮に他のメンバーのリソースが空いていたとしても、案件を受けないという。

そこで今回、なぜマスクマンはベストアサインにこだわるのか、またどのようにベストアサインを実現しているのか、ナカニシケイゴ氏にお話を伺った。

ベストアサインが必要な理由―― 彼女にLINEする5分間を、自分たちのWebサイトに使ってもらうために

―― 「リソースが空いていも、ベストアサインでなければアサインしない」その理由を教えてください。

前職のときに、「リソースが空いているから」という理由でメンバーをアサインしたことがあったんですね。その当時はチームメイクのやり方もわからなかったんです。そしたら、結果的に納期には間に合わない、アウトプットもいいものにならないという経験をしまして。

リソースが空いているからという理由で無理やりアサインしたメンバーでチームを組んでも、スピード感があわなかったり、仕事の流れがうまくいかなかったりで、みんなに負担がかかってしまうわけですよ。そうなると最終的には、クライアントにも迷惑がかかってしまう。そういった「チームメイクって大事だな」と感じた経験から、ベストアサインを常に大切にしています。

―― ベストアサインを実現するために、メンバーのどういった点を見ているのでしょうか?

スキル面、実績面はもちろん、知らないものに対して学習する姿勢なども見ています。

たとえば過去に、ある漫画を取り上げる案件がありまして。どのデザイナーをアサインしようかなと考えたときに、基本的には「テイストが合っているデザイナーと仕事したい」と思っているので、その漫画のことが大好き!という人をアサインするのですが、そのときは「この漫画について詳しくないけど、彼ならできるのでは?」と思ってアサインしたデザイナーがいました。

アサインした結果、その彼は好きになるまで漫画を読み込んでいましたし、漫画のワンシーンをコラージュした絵をつくる際も、「この作品なら、このカットのほうがいいんじゃないですか?」と提案してくれるなど、結果的にいいアウトプットをしてくれたんですよ。

マスクマンが手がけた案件一例

―― スキルだけを見たアサインと、マインドを含めたベストアサインでは、最終的なアウトプットにどういった違いがあると感じていますか?

スキルだけを判断してアサインすると最終的なアウトプットは最高でも100点ですが、マインドを含め、「この人なら!」というベストアサインができると、アウトプットは120点、130点取れるようなものが出てくるんです。

これまでも、みんなイメージを越えてきてくれるようなアウトプットをしてくれていて、「めちゃくちゃいいじゃん!」と僕も嬉しくなりますし、早くリリースしたいな、出したらめちゃくちゃウケるんだろうな、と想像しちゃいますね。

基本的に、僕は「ウケたい」と思っているんですよ。というのも、たとえばWebサイトをポンッと公開したときに、ユーザーに対して「(サイトを見るための)5分をください」という立場なわけです。そのユーザーはコーヒーを飲んでもいいし、彼女にLINEをしてもいいという状況の中、その5分でWebサイトを見てもらえるよう、興味を惹くアウトプットをしなければいけない。

つまり、自分たちのアウトプットのライバルは世の中のすべて。絶対に彼女にLINEする方が楽しいじゃないですか(笑)。それでも、ユーザーの目に触れたときに、1分でも5分でもいいからWebサイトを見てもらうためにはどうすればいいか―― そう考えたとき、ベストアサインでベストなアウトプットを心がけるべきですし、それがクライアントのためにもなると考えています。

「損得で人を判断する人は大嫌いです(笑)」人に興味がないとベストアサインはできない

―― ベストアサインのためには、内面含めて、メンバーのことを知っていないとできないですよね?

そうですね、そして人に興味がないとベストアサインは無理だと思います。いるじゃないですか、人を損得だけで見てしまう人。僕はそういう人が大嫌いなのですが(笑)、役に立つ、立たないといった表面的なことで人を見ていたら、ベストアサインなんかできないですよ。

スキルや実績だけでなく、普段の会話から「この人はこういうことに興味があるんだ」といったことを常に見ているからこそ、ベストアサインはできるなと。前職は人数も多い会社でしたので、一緒に働いたことがない人も多くいましたが、どういった人がいて、どういったマインドの仕事をしてくれるかは常に見ていましたし、その人がどういう人かと聞かれれば答えられる自信があります。

たとえば、雑談で「こんな漫画好きなんですよ」「最近、アウトドアにハマっていて」といった会話をしたりしますよね。そして自然をテーマにした案件が来たときに、「そういえば、アウトドア好きだったよね?」と相談するんです。やっぱり、好きなことだったら案件にも身が入りやすいじゃないですか。

余談ですが、小学校のときから僕、ベストアサインをやっていたんですよ(笑)。絵も描けて、習字もやっていたので、先生から「文集をつくれ」と言われたんですね。それで僕がやったのは、絵が上手いヒデユキくんと、字が上手いヒトミちゃんをアサインしたんです。

そしたら、先生に怒られました(笑)。「私はあなたに頼んだよ!」と。だけど、僕からしたら意味がわからないわけですよ。自分よりもできる人がいて、本人たちもやりたいと言ってくれて、僕ひとりでつくるよりもいい文集ができるのに、なんでだ!と。

きっと、昔から「この人はこういうことが好き」「この人はこれができる」といったことを見る性格だったので、結果的にディレクターという職についたんだと思います。

―― 「人をよく見る」というのは、とても大事ですね。

メンバーにも「人をよく見ろ」と伝えています。それはベストアサインのためだけでなく、クライアントであるお客様に対してもそうだと思っていて。

たとえばお客様に対してのメールで「よろしくお願いします。」にするか、「よろしくお願いします……!」か、それとも「よろしくお願いします!!!」にするかでも僕はめちゃくちゃ悩むんですよ(笑)。

メンバーが前の会社で「三点リーダーを使うな」と言われていたらしいのですが、メールであろうとこちら側の表情まで伝わるような返答をしたいですし、そのほうが伝わるのであればビジネスマナーをしっかりと守る必要もないと思っています。

それは、僕たちは「マスクマンにお願いします」と指名されてお仕事をいただくことが多いからというのもあり、人と人の会話というのを大切にしたいなと。

「仕事をとる」と「仕事をする」をわけて考えると、案件を断ることに不安に感じてしまう

―― もしベストアサインができない場合は、どうされるのでしょうか?

シンプルな話で、ベストアサインできなかったら仕事を受けない、というだけですね。これまでお受けしているのは、このチーム、このメンバーであれば!というベストアサインができている案件がほぼ100%です。

そしてメンバーだけでなく、お客様に対しても「ベストアサイン」という考えを持っていて。僕たちはお仕事をいただく立場なので、僕たちのチームを選んでいただくのは非常に嬉しいんです。だけど、入れ替え可能なチームだと思われて、「誰でもいいから」といった下請け的なマインドでのオーダーは、お断りしています。

やっぱり、相性が合わないと仕事がスムーズに進まないんですよ。結果、メンバーの負担も大きくなるし、いいアウトプットができないので、オーダーをいただくクライアントとの相性というのも見て仕事を受ける、受けないを判断しています。

―― 売上にも直結するので、「仕事を断る」というのはなかなか真似できないのかなと感じました。

案件を断るって、もちろん恐いですよね。だけど、”仕事をやる” のと “仕事を取る” というのを分けて考えている人が多いと思うんですが、僕たちはそこに垣根があるとは考えていなくて。

電話がかかってきて「はい! マスクマンです!」というのも営業じゃないですか。気持ちいい会社だなと思って次に繋がるかもしれない。担当した案件がリリースされてバズったりすることも営業、その仕事を見てお問い合わせが来たりしますからね。

営業をする瞬間と仕事をする瞬間を分けて考えると、案件を断るということが不安に感じると思うのですが、ベストアサインによっていいアウトプットができれば、次に繋がります。逆にベストアサインができずにお客様に迷惑がかかってしまうと、次に繋がりません。

ベストアサインができない場合は「こんな理由でいまは受けられません」と誠実に断る。そうすると、また別のときに「こんな案件だったらどうですか?」とお問い合わせをいただくこともあるんですよ。

逆に「オレのアサイン断りやがった」と機嫌を悪くされるお客様とは、そもそも相性が悪いですよね。誰でもいいと思ってオーダーされているわけですから、そういった案件は僕たちにとってはベストアサインではないと考えています。

「完成形をイメージすれば、ベストアサインが見えてくる」期待に応えるアウトプットのために

―― ベストアサインを実現する上で、大切なことはなんだと考えますか?

いくつかあって、1つは案件の相談を受けたときに、まずアウトプットの完成イメージを思い描くことです。「こういうアウトプットですよね」と想像できれば、どういったメンバーをアサインすべきか見えるからです。

過去に、「ツリー型の回転寿司をつくりたい」というお話をいただいたのですが、スパイラル上にレーンが上がっていって、というのをイメージできるじゃないですか。そこで調べてみたら、回転寿司のレーンを制作している会社が石川県に1社しかなかったんですよ。電子工作をやっている会社がいまたくさんあるにも関わらず、1社しかいないということは特殊なノウハウがあるかもしれないと思ったんです。

そこで実際に石川県のその企業に電話してみたら、寿司レーンって直線のとこでもカーブのところでも等速で動かないといけなくて、傾斜が必要なレーンは物理的に無理だとわかりました。

そして「物理的に無理ですね」とクライアントに折返し電話するまで3時間くらい。もちろん、そういった理由を説明すれば先方も理解してくれます。しかし、もし調べずに「やります」って言っていたら、結局できなくて炎上していましたよね。

また2つめは、「あの人、あの企業と一緒にやったらできそうだな」という引き出しを増やすことも大切ですよね。ベストアサインというと身内だけをアサインするイメージがありますが、どこに問い合わせればいいか、どこだったら制作できるか、と最適な外部パートナーを探すことも含めてベストアサインだと考えています。

やはり、「マスクマンだったらできるかな」と思っていただいて相談を受けているので、なんとかして期待に応えたいじゃないですか。

そのため、考えた結果「できない」という判断であればいいのですが、最初から「できない」と思ってしまう方とは、なかなか仕事がうまくいかないんですね。幸いなことに、これまでベストアサインだなと思う外部パートナーの方々は、みなさんとても前向きで。相談すると、どうやったらできるかを一緒に考えてくれるので、みなさんのおかげでいつもいいアウトプットができているなと感じています。

―― 今後、ベストアサインによってどういったアウトプットをしていきたいですか?

僕たちはデジタルが強みだと思っているのですが、Webサイトやアプリをつくるときも、リアルな世界のフィードバックが得られるような仕事をしたいなと考えています。広告案件に関わっている以上、やはりその商品が売れた、というのが大事だと思うんです。

そのため、僕たちのクリエイティブを見たり触れたりして、エンドユーザーのお客様の心が動いたり、記憶に残ったり、商品を購入してくれるようなことができるよう、これからもベストアサインによって最高のアウトプットを出していきたいですね。