Webクリエイターのための転職サービスとして2009年より運営をしている『MOREWORKS』。掲載企業の制作実績が閲覧でき、また求職者であるクリエイターのポートフォリオも項目に合わせて入力するだけで作成できる機能などを設け、Webクリエイターの転職活動を支援してきました。

そして運営開始から10年目という節目を迎えたいま、デジタルマーケティングエージェンシーである
株式会社MOLTSがMOREWORKSの運営に参画。MOLTS代表取締役である寺倉そめひこ、そしてMOREWORKSを運営している株式会社HIVE代表取締役の平野健太郎は「これまで以上に、クリエイターへの還元を愚直に行っていきたい」と語ります。

なぜMOLTSがMOREWORKS運営にジョインすることになったのか? またMOREWORKSは今後どのような変化を遂げていくのか? 寺倉そめひこ、平野健太郎の対談を通じて、その全貌をお届けいたします。

寺倉 そめひこ

株式会社MOLTS 代表取締役兼CSO。1987年生まれ。立命館大学を卒業後、経営コンサル、藍染師等を経て2013年株式会社LIGに参画。メディア事業部のマネージャーを経て2015年に人事部長、同年9月に執行役員就任。2016年3月にMOLTSを立ち上げ、現在はスタートアップから東証一部上場企業まで幅広く、事業構築からマーケティングまで幅広くコンサルティングを行っている。

平野 健太郎

株式会社ハイブ代表取締役。1978年生まれ。大阪芸術大学を卒業後、箱根彫刻の森美術館の学芸員として勤務。その後、株式会社エフアイシーシーを創業。現在はスタートアップ支援を通して複数企業の役員を務める。

株式会社MOLTSが『MOREWORKS』共同運営に参画した理由

― このたび、株式会社MOLTSは株式会社HIVEの株式の一部を取得し、『MOREWORKS』の共同運営を行っていくことが決定いたしました。そのキッカケとも言えるのは、互いが互いを「自分の人生に付き合わせたい」という想いを持った寺倉そめひこと平野健太郎の出会いにあります。

寺倉そめひこ(以下、そめひこ):はじめて平野さんに会ったのは、まだ僕が前職のWeb制作会社、株式会社LIGで人事部長をしているときで、MOREWORKSを利用する “企業側” の立場で平野さんをご紹介いただいたんですよね。そのときの紹介のされ方がすごくて、「掲載してもらえないかもしれないけど、会ってみる?」と。掲載を希望しても、クリエイターのためになる企業しか載せないというスタンスに驚きました。

平野健太郎(以下、平野):僕は実際に会う前からWeb上でそめひこのことを知っていて、「人事らしくない人事が出てきたな」とゲラゲラ笑っていたのを覚えてる。僕自身、面接の時に2時間くらい人生相談に乗ったり、その人の本当にやりたいことが見えてきたら、それが実現できる可能性のある会社を紹介しちゃったり、 “一般企業の人事” らしくないことをしていたから、「自分と似たようなやつだな」と、そめひこに対してひとりで勝手に共感していた。

あと、実際に会って話をしていく中で、「そめひこは、人にチャンスをつくってあげる採用が得意だな」と思っていたんだよね。

そめひこ:原体験として、まだ僕が25歳の頃、東京に来る前まで藍染め師をしていたんですが、未経験なのに前職のLIGに採用してもらえたというのが大きくあって。僕が何をできるかもわからないのに、「こいつの可能性を信じよう」って採用してもらえたからこそ、今の自分がいるんですよね。

だから僕自身も、当時はですが過去の実績だけで判断するのではなく、その人の可能性を信じて、チャンスをつくってあげる採用をしたい、というのはありましたね。もちろん、社内の方々と話し合った上で、ですが。

平野:僕も美術館の学芸員をやっていたときに荻野(FICC代表取締役)から一緒にやろうと誘われて、Webのことは何もわからないし、Photoshopとかもちろん使えないのにFICCの創業メンバーだったから、すごいその気持ちはわかる。

当時の自分の仕事は何なの?と考えたら、クリエイターである彼らの可能性を最大化することがミッションだったんだよね。

そして、それは今も変わらずあって、MOREWORKSを通じて「クリエイターの可能性を最大化させる」という大切にしていることを、そめひこと一緒ならよりできることがあるなと思った。

平野:具体的に話が進んだのは、本当に最近で。当時、MOREWORKSはクリエイターから信頼されているサービスではあったけど、競合サービスも増えてきて、より良いサービスにするにはどうすべきか悩んでいた時期で。それで、そめひこに相談したんだよね。

そしたら、「平野さんと一緒に仕事したかったんですよ! やりましょう!」と、二つ返事で快諾してくれた。あれは、嬉しかったな。

そめひこ:僕は人を損得勘定で見ちゃうんですよ。それはどういうことかと言うと、「10年後に一緒にお酒を飲んだら楽しいか」「さらに楽しめる経験ができるか」という視点で見るんですね。平野さんは純粋に「一緒に飲みたい!」と思える人だった。

そして、平野さんのMOREWORKSに対する想いを聞いたとき、「この人を自分の人生に付き合わせよう」と思いました(笑)。ビジネス的な観点は後から考える、まずは人を見て、という考えですので。

平野:それは僕も一緒で。はじめは共同運営とかではなく、単純にMOREWORKSをさらにグロースさせるためにMOLTSに依頼した、というのがキッカケだったけど、互いに互いを自分の人生に付き合わせようと思ってるから、結果的にいまの「共同運営」というのが実現したよね。

「赤字にならなければいい」くらいの気持ちでクリエイターへの還元を愚直にやっていく

― 赤字にならなければいい、という考えで10年続いてきたMOREWORKS。ビジネスとしてドライに捉えるのではなく、「クリエイターのために自分たちができることは何か」を真剣に考える二人には、ある想いがありました。

そめひこ:MOREWORKSの運営に参画したいと思ったのは、個人的な想いも実は強くあって。前職のLIGでクリエイターのメンバーたちと仕事をしていて、自分も彼らみたいなクリエイターになりたい!と思ったことが多くあり。だけど蓋を開けてみたら、自分が得意で、かつ求められていたのは事業作り全般におけるプレイングマネージャーで。

しかも、藍染めからWeb未経験で何もわからず突っ走ってきたから、クリエイターと適切なコミュニケーションもとれていなくて、当時一緒に仕事をしていたメンバーが苦労していたタイミングでも何をしてあげれば良かったのかわからず。その観点において、振り返っていまだに後悔することはあります。今なら、こうできたかなとか。

自分が「クリエイターになれなかった」「クリエイターを支えてあげられなかった」という思いもあって、仕事柄クリエイターと向き合うべきだと分かっていても、どこかクリエイターに対して逃げていた部分があったなと。だけど平野さんと話をしているうちに、あらためて「クリエイターのために自分は何ができるのか」と考えられて、いい機会をいただけたと思っています。

平野:僕も「クリエイターになれなかった」人間で、これまで常にナンバー2ポジションだったから、いかに輝ける人をサポートするか、しかできないんだよね。

そして、クリエイターの価値って多様性があるにも関わらず、どんなスキルを持っていて、何ができるか、とクリエイターを「点」で評価しがち。だけど、そのクリエイターの「将来の可能性」を考えると、自社ではなくて他社に行った方がいいとか、逆にいま自社ですぐに活躍できないかもしれないけど、いつかきっと会社に貢献してくれるから採用しようとか、クリエイターの可能性を信じて投資する考え方が大事だと思っていて。

クリエイターは環境によって、成長できるスピードが本当に大きくかわる。目の前で見てきた経験から、原石のような良いクリエイターが、自身の可能性を最大限に広げられる会社に出会えないのは、本当にもったいない。

そめひこ:クリエイティブ業界の転職市場は、ビジネス的に見るとそれほど大きな市場ではないと思っていて。だからこそ、愚直に想いをもって、今後のMOREWORKSが発展していくためにも、その想いから派生した形を作っていく必要性があると思っています。

平野:僕もこの10年間、「赤字にならなければ、いいや」という気持ちでMOREWORKSをやってきたから、もはやクリエイター支援ってライフワークのようなもの。

だけど、これまでどちらかと言えば受け身の姿勢で運営をしていたから、MOLTSが加わることによって積極的に攻めていきたい。そして少しでも、クリエイターと企業の “もったいない” ミスマッチが減って、輝けるクリエイターが増えればいいなと。

そめひこ:そうですね、攻めなければ市場はつくれないですし、攻めなければ意味がないと考えているので、今後は積極的な情報発信はもちろん、よりクリエイターのためのサービスを目指していければなと思います。もちろん、赤字でもいいという覚悟はないです、きちんとビジネスとしての成長戦略を加味した上で、展開していくつもりです。

企業の綺麗ゴトではなく、「クリエイティブの裏側」をクリエイターは求めている

― 運営にMOLTSが加わり、MOREWORKSとして新しく展開するのは、掲載企業と共に展開する共同運営型オウンドメディア『URAGAWA』。企業の発信したい情報ではなく、クリエイターが知りたい情報を発信するメディアを目指していきます。

そめひこ:まずMOLTSが関わり着手するのは、MOREWORKSの健康状態の把握です。つまり、会社としての会計状況の把握と同じで、サービスのデータ解析を行っていき、健全な運営をするためのサービスの数値把握を徹底して行い、リアルタイムで何が起きているのかを計測できるようにする予定です。それなしでは適切なジャッジはできないですし、どう攻めるべきかわかりませんから。

そして、それを待たずして行うことが、MOREWORKSのオウンドメディア『URAGAWAを展開していくことです。何も分析せずにこのタイミングでメディアをやるって、僕としては結構ない意思決定で。ただ、1年、2年先を考えると、今必死に投資してでもやるべきだし、「クリエイターのことをもっと知らないと」と思ったら、勉強するためにもメディアを活用して関わりを作っていかないとなって。

クリエイターに「クリエイティブ系でパッと思い浮かぶメディアって何ですか?」と聞くと様々な声がありました。それこそ競合となる『CINRA.JOB』や『BAUS』と答えるクリエイターも多く。MOREWORKSの共同運営の話が決まってから、競合にあたる両媒体を見続けましたが、素直に良い媒体だな、学びが多いな、と思っていました(笑)

ただ、何気なく普段からよく訪れるのは『muuuuu.org』や『S5-Style』などのサイト収集型のポータルサイト。ヒアリング内容をまとめていくと、クリエイティブのヒントを探し続けていることがわかりました。

なので、URAGAWAは「クリエイティブの裏側データベース」として、クリエイターがつくりあげたクリエイティブの裏側をはじめ、所属する企業、人、考え方の裏側をしっかりと蓄積していき、クリエイティブだけでなく、クリエイターとしての成長、生き方のヒントになるようなデータベースを作っていければと思っています。まだまだ始まったばかりでこれからですが、どんどん進化させていきます。

平野:昔、業界で活躍しているクリエイターたちが集まる飲み会があって、「せっかくだから若手も呼ぼう」と。飲み会では現場の裏話や制作秘話などがよく出るので、若手にもいい刺激になるだろうと思って。初めて会う人も多かったけれど、本当に楽しかったし学びのある時間だった。

その若手たちも、いまでは各方面でめちゃくちゃ活躍していて、再会するとあの時の飲み会の話になったりする。そういった裏側の話が飲み会などでの閉ざされた場だけではなく、URAGAWAを通じてコンテンツ化していったら絶対に面白いし、クリエイターにはそういったコンテンツが必要だと信じている。

クリエイターは常に質の高いインプットを求めているし、彼らにとって学びがある情報を発信していきたいね。

そめひこ:URAGAWAは読んで字のごとく、クリエイティブの裏側を映し出して行こうという意味を込めていて、プレスリリース的な掲載企業目線ではなく、クリエイター目線で欲しい情報目線で組み立てられたオウンドメディア。なので、「御社のいいコトだけを書きます」ということは絶対にやらず、むしろMOREWORKS掲載企業と共同運営という形で運営していきます。

クリエイターのためになるコンテンツを、掲載企業と一緒につくっていく。だから、僕はヒアリングするときも「ケツの穴まで見せてください!」って話をしていますし、飲み会など本音や裏側が聞けやすい場所にはぜひ行きたいです(笑)。

平野:企業目線のコンテンツだと、どうしても綺麗ゴトが並びがちだもんね。そうなると、そのコンテンツがキッカケで入社しても「全然実態は違うじゃん」と採用のミスマッチが起きてしまう。他のメディアでは書けないことも、URAGAWAでは笑って書いていきたいね。

そめひこ:「かっこつけず、等身大の企業を見せていきましょう」と。なかなか難しいかもしれませんけど、それが一番かっこいいと思うんです。URAGAWAから依頼して記事化をしても、クリエイターのためにならない記事だなと判断したらお蔵入りにしてもいい、とすら思ってます。

MOREWORKSが描く「クリエイターへの還元」の展望

― 働き方が多様化している昨今、クリエイターの働き方も変化していきます。そのため、クリエイターへの還元を愚直に行っていくためにも、MOREWORKSは転職サービスという形態にこだわらず、日本におけるクリエイターの価値向上のキッカケをつくれたら、と考えます。

そめひこ:MOREWORKSの根底にあるのは、やはり「クリエイターへの還元」なので、転職市場だけを見て動けばいいというわけではないと思っています。働き方も多様化している中で、市場をどう広げていくのかをトライしつつも、それ以外のアプローチも考えていたり。

そのためにも、MOREWORKSの考えに共感してくれる人たちの輪を広げていき、「右向く? よし、じゃあ右!」と臨機応変に方向転換できるような体制をつくっていきたいです。

平野:そして、まだ海外に比べて、日本はクリエイターへの評価が低いと感じていて。たとえば僕がやっていた美術館の学芸員という職も、海外だととてもステータスのある仕事なのに、日本では手取り20万円とかなんだよね。

これまでMOREWORKS経由で年収100万以上アップした方もいたんだけど、年収があがることだけが目的ではなく、クリエイターの可能性も同時に広がって輝けることが、一番大切にしたいポイント。そうやってクリエイターのチャンスをつくってあげる採用をこれからも増やしていきたいし、MOREWORKSをひとつのキッカケに、日本におけるクリエイターの市場価値を高めていけるような気運をつくっていきたいな。

そめひこ:綺麗に成長曲線を描くことだけを考えていけば、もちろん苦労は多くあるでしょうけど、個人としても、会社としても、今までその経験を繰り返し行ってきたので問題なくいけるだろう、と思っています。

でも、そうじゃない、何か世にあまり聞かない、インパクトを与えることができなければ意味がないと思っています。じゃないと、スピード感が追いつかない。

0か100か、みたいな勝負を、この1〜2年の間で仕掛けていければと思っています。それを行って100に出来たら、美味い酒が飲めそうだなと思うので。